市長交際費支出基準、改ざん掲載

市政協力員葬儀に弔慰支出26,500円

10月6日夜、取手市の公式ツイッターで「令和3年9月分 市長交際費の支出状況」というタイトルだけの無内容投稿が私のタイムラインに流れてきました。

掲載リンクから、取手市役所サイトの該当ページを開くと、下記キャプチャの通り、9月27日に執り行われた市政協力員の葬儀に対して、弔慰支出として10,000円と生花代16,500円の計26,500円が支払われていました。

ちなみに、市政協力員とは、取手市役所サイトの該当ページによると

取手市では、地域と行政の連絡役を担っていただく市政協力員を市内各地区に委嘱しています。

などと紹介されています。「取手市市政協力員設置に関する規則」の別表2によると、市政協力員は、担当する地区の人口に応じて年額10万円〜25万円の「謝礼」が支払われますが、後述するように、公務員ではありません。

支出基準の公開明記

まず、市長交際費はどのような目的・趣旨で支出されるのでしょうか? 取手市役所サイトの「市長交際費の支出状況」ページを見ると

交際費は、市長等が市を代表し、行政の円滑な執行を図るため、外部の個人や団体の皆様との交際に要する経費です。支出にあたっては、市長交際費支出基準に基づき、社会通念上妥当な範囲で、最小にとどめるよう配慮しています。

と、基準に従って社会通念上妥当で最小範囲で支出するとうたっています。併せて支出基準を公開し支出内容を公表すると明記されています。

弔慰支出範囲は限定的のはず…

記事執筆時、取手市役所サイト「市長交際費支出基準」ページの下記キャプチャ(赤枠は筆者追加)の通り、交際費の種別は「慶祝」「弔慰」「見舞」「壮途」「賛助金」「その他」に分類されていました。このうち、「弔慰」の支出範囲については

取手市特別職で非常勤の者、地元の国会・県議会議員、関係市町村の首長並びに議長及びその親族に対して支出できる。

と、明示されていました。「等」「など」「このほか市長が必要と認めたもの」といった、拡大解釈や市長お手盛りにつながり兼ねない文言は使われていません。

「地元」「関係市町村」「親族」の範囲について議論の余地があるものの、「特別職で非常勤の者、地元の国会・県議会議員、関係市町村の首長並びに議長」、またはこれら方々のご親族が亡くなられた場合に対してのみ弔慰支出できると理解できます。

記事執筆時、弔慰支出する内容については、下記キャプチャの通り、「特別職で非常勤の者、地元の国会・県議会議員、関係市町村の首長並びに議長」の「本人」死去に対し、一律「10,000円並びに花輪または生花」となっていました。

「支出基準」逸脱の弔慰支出

では、9月27日に弔慰支出された「市政協力員」は、上記の「特別職で非常勤の者、地元の国会・県議会議員、関係市町村の首長並びに議長」に該当しているのでしょうか?

確かに2020年3月までは「特別職で非常勤の者」に該当していました。しかし、翌4月からは、地方公務員法の一部改正で非常勤特別職の要件が厳しくなりました。市政協力員は非常勤特別職から外れ、私人による「有償ボランティア」という身分になったのです。

すなわち、市政協力員葬儀に対する弔慰支出計26,500円は、取手市役所サイトに掲載されていた「市長交際費支出基準」から逸脱しているという疑念がわき上がりました。

そこで、10月7日、取手市役所サイトのお問い合わせフォームから、下記通り(URLや改行は省略削除)問い合わせて、回答を求めました。

「令和3年9月分 市長交際費の支出状況」において市政協力員葬儀に弔慰金1万円と生花代16,500円が支出されています。これについて下記2点質問します。

1)この支出は「市長交際費支出基準」のどれに基づく支出ですか?

2)弔慰金1万円に加えて、生花代16,500円を支出したのはなぜですか?生花代がない葬儀支出もありますが、この違いはなんでしょうか?

「市長が特に認めるもの」が見当たらず再質問

7日夜、市秘書課からメールで下記回答(改行追い込み処理)を頂きました。

①令和 2 年 3 月まで市政協力員は非常勤特別職に該当していましたので、これまで現職本人が亡くなられた際には、弔慰金として 10,000 円を交際費より支出しておりました。令和 2 年 4 月より制度が変わり、市政協力員は有償ボランティアとなりましたが、現職本人が亡くなられた際には、それまでの支出歴に基づき「市長が特に認めるもの」として支出をしております。

②生花の支出につきましては、支出基準に基づき弔慰金とあわせて支出可となっております。 葬儀に参列する際、原則弔慰金のみの支出としておりますが、ご指摘の市政協力員はこれまで長きにわたり市政協力員にとどまらず幅広く行政にご協力いただいている方でございましたので、市より弔慰を示すため弔慰金 10,000 円に加え生花を支出したという経緯でございます。なお、故人が生前歴任されていた役職につきましては、特定に繋がる可能性がございますので、記載は控えさせていただきます。ご理解くださいますようお願い申し上げます。

1点目の問い合わせに対し市秘書課は「市長が特に認めるもの」と回答してきました。しかし、「市長が特に認めるもの」という文言は、取手市役所サイトに掲載されていた「市長交際費支出基準」に見当たりませんでした。

もしや支出種別<その他>の「市長が特に必要と認めた事項」に基づいて支出していると誤って説明しているのかもしれないと考えました。この疑問点を何よりも先に解消すべく、下記(改行追い込み処理)の通り、メールで再質問し回答をあらためて求めました。ちょっと厳しい表現も入りました。

1)の「この支出は『市長交際費支出基準』のどれに基づく支出ですか?」と質問に対し「市長が特に認めるもの」との回答を頂きました。この文言は同基準に見当たりませんが<その他>「市長が特に必要と認めた事項」に基づいて支出したとの理解でよろしいでしょうか?もしそうであれば、同基準を不適切に拡大解釈しているといわざるを得ません。

すなわち「その他」は「そこにあげてあるもののほか。」(『広辞苑』)という意味であって同基準に当てはめれば<慶祝><弔慰><見舞><壮途><賛助金>以外の使途種別については「市長が特に必要と認めた事項」について支出するという意味です。弔慰支出は<弔慰>に記載された範囲に厳密に従って支出されるべきです。

ご回答にあるように、市政協力員が昨年4月から非常勤特別職でない以上、今回の弔意支出は<その他>と<弔慰>いずれの範囲も逸脱しており市長お手盛りの不適切な基準外支出とのそしりを免れません。以上を踏まえて、貴課の考え方をご回答ください。

「簡略化した表現で掲載」と回答し謝罪

この指摘に対して11日、下記の通り、謝罪を含む再回答メールが届きました。

令和 3 年 10 月 7 日にお寄せいただきました再質問について、回答いたします。

当該支出について適用した基準は、<弔慰>の中の『その他(市長が特に認めたとき)』 になります。

HP における記載は、わかりやすさのため文字数削減の観点も含め、簡略化した表現で掲載させていただいております。したがいまして、HP に記載のある『その他』には、慶祝や弔慰以外の事項を指す意味に加え、各項目の『その他』も含んでいるという説明を意図して、 現在の表記とさせていただいております。

しかしながら、このたびの●●様のご指摘のような誤解を招く表現となってしまっているという点につきましては、真摯に反省するとともに、適切な表現となるよう速やかに修正させていただきます。

誤解を与えてしまい、大変申し訳ありませんでした。

参考までに、<弔慰>基準の詳細を添付させていただきます。

重大なことに、取手市役所サイトに掲載していた「市長交際費支出基準」は実際の運用基準ではなく、編集加工した「改ざん版」だったことを明かしたのです。

「正規版」と大きく異なる「改ざん版」

「参考までに」とメールにPDF添付されていた、市長交際費支出基準「正規版」とされる中から抜粋された「弔慰金」部分は下記画像の通りです。取手市役所サイトに掲載されていた「支出基準」と大きく異なっていることは一目瞭然です。市民にとっては「改ざん版」と呼べる改変です。

今回、市政協力員への弔慰支出は、この表の最下段にある「その他(市長が特に必要と認めたとき)」に該当し、金額は「必要に応じて」決めて生花を付けたというのが市秘書課の最終説明となるのです。

支出基準「正規版」の開示請求

市民に何ら説明もなく改変した「改ざん版」で、市長交際費支出状況を厳正にチェックできるわけがありません。謝罪しているとはいえ、市民の知る権利を侵害する重大な問題です。

このため、10月11日、取手市長に対し、下記の通り、真正の市長交際費支出基準などの情報を開示するよう「いばらき電子申請・届出サービス」を通じて請求しました。

取手市長の「交際費支出基準」、および制定や改定に関連する、すべての文書(議事録を含む)・電磁的記録(メール・市役所ホームページを含む)

請求に対し、動きがあれば、今後追加報告していきます。

※2021年11月9日…趣旨を変えない範囲で字句修正
※2021年11月16日…「市長交際費支出基準」ページが11月11日、「改ざん版」から「正規版」に基づく内容に差し替えられました。「改ざん版」との混同を避けるため、埋め込みURLを削除しました。また、一部語尾を過去形に手直ししました。差し替え前の「改ざん版」はこちらで確認できます。

2021年10月17日 20:17note公開

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