交際費基準改ざん18年、欺かれた市民

「正規版」に基づき支出基準ページ全面差し替え

市長交際費支出基準、改ざん掲載」と「市長交際費支出基準、深まる不信と謎」でお伝えした取手市長交際費支出基準(以下「支出基準」と略記)の改ざん掲載問題で、取手市公式ホームページの「市長交際費支出基準」ページが11月11日、全面的に差し替えられました。

ポチが情報開示請求手続きで入手した支出基準「正規版」がPDFファイル形式で掲載されるとともに、記載内容も「正規版」に基づくものに書き改められました。ただ、全面的に差し替えた理由は説明がありません。

開示文書で改ざん経緯や理由分からず

市長交際費支出基準、深まる不信と謎」の記事末尾でも書いた通り、「改ざん版」をホームページになぜ掲載するに至ったのか、その理由や経緯も知りたいと、情報開示請求では

取手市長の「交際費支出基準」、および制定や改定に関連する、すべての文書(議事録を含む)・電磁的記録(メール・市役所ホームページを含む)

と、支出基準の制定当時からこれまでの改定経緯が分かる文書類の開示も請求しました。しかし、開示された情報に議事録は特になく、起案通りに決裁が通っていることから、改ざん版をホームページに掲載した経緯も理由も残念ながら読み取ることはできませんでした。

制定当初の支出基準廃棄、問われる文書管理

請求に対して開示された情報の目録は次の画像の通りです。

制定当初の支出基準とみられるNo.1「平成13年度に発生した市長交際費支出基準」は「保存年限経過により文書廃棄済みのため」存在しないとの理由で不開示になりました。支出基準の大本となる制定当初の文書が存在しないことにがくぜんとしました。

取手市では文書の適正管理を規定した「文書管理規則」があります。文書の保存期間は永年、10年、5年、3年、1年に区分され、それぞれどんな文書が該当するか基準が定められています。

この文書管理規則の基準でNo.1「平成13年度に発生した市長交際費支出基準」がどれに該当して廃棄したのか、11月4日の文書開示の席で市秘書課長に尋ねましたが、明確な回答はありませんでした。

また、開示文書を持ち帰って気がついたことですが、No.1「平成13年度に発生した市長交際費支出基準」の表記中「平成13年度」は後述するように「平成15年度」の誤りと思われます。ここでもまた、文書管理のずさんさが問われます。

市役所で作成された文書は市民の財産であり、そのずさんな管理は、情報公開制度、そして市民の知る権利を骨抜きにするものです。

制定当初の基準、変更起案文書から推測

制定当初の支出基準を変更するため起案された文書No.2「平成20年11月17日起案『市長交際費基準の変更について』」に「変更点」と題する文書が含まれていました。気を取り直して、これを元にしながら、変更前=制定当初の支出基準にはどのような規定が盛り込まれていたのか推測してみました。

No.2「平成20年11月17日起案『市長交際費基準の変更について』」は①変更点のほか、②変更点の補足説明③支出基準変更案全文④周辺10市の市長交際費の支出区分・支出状況で構成されていました。

初基準に運動会や納涼祭祝儀、餞別、近火見舞い

このうち①変更点の下記内容から制定当初の支出基準には少なくとも
・地域スポーツ大会、運動会、各種団体研修視察、地域納涼祭への祝儀
・餞別
・近火見舞い
に関する規定が含まれていたことが確認できます。

他方、支出基準の制定当初、取手市公式ホームページはどのように掲載していたのでしょうか。世界的なデジタルアーカイブ「ウェイバックマシン」(Wayback Machine)が2003(平成15)年8月10日に収集保存していた「ようこそ市長室へ〜交際費の支出状況」ページに支出基準を見つけることができました。

「団体研修視察」以外はHP掲載せず

制定当初の支出基準に盛り込まれていたと推測できた
・地域スポーツ大会、運動会、各種団体研修視察、地域納涼祭への各祝儀
・餞別
・近火見舞い
に関する各規定のうち、なんと「団体研修視察」(日帰り5000、一泊10000)しか見つかりません。地域スポーツ大会、運動会、地域納涼祭、餞別、近火見舞いという具体的な支出対象名は見当たりません。

また「付則 この基準は、平成15年8月1日から施行する」と記載されている通り、最初の支出基準が施行されたのは、平成13年度ではなく平成15年度であることが分かります。

「訪問時・来庁時の手土産」もHP掲載なし

続いて起案文書No.2「平成20年11月17日起案『市長交際費基準の変更について』」の③支出基準変更案全文で、制定当初の支出基準がどう変更されたのか見てみましょう。この文書は起案した当日、藤井市長が決裁印を押し、翌年2009(平成21)年4月1日に支出基準が変更されます。

「訪問時・来庁時の手土産は…」と規定している「謝礼」という項目は前述の①変更点で言及されていないことから、制定当初の支出基準にも設けられていたことが分かります。しかし、先に示した2003年8月10日保存のホームページに「謝礼」という項目は見当りません。

対象者・市町村リストや「謝礼」削除し掲載

支出基準の変更を受けてホームページにどのように掲載するかについては、開示された起案文書No.3「平成21年3月31日起案『市長交際費支出基準のホームページ掲載について』」に付いていた下記ページ案で知ることができます。

このホームページ掲載案と、先ほど確認した③支出基準変更案全文とを比べると、大幅に書き替えられたことが一目瞭然です。「正規版」から弔慰支出対象者のリストが削除され、「地元」「関係市町村」とあいまいな規定に置き換えられていました。「謝礼」という項目も引き続き脱落し、明らかに「改ざん版」です。

開示文書によると、支出基準はその後、下記の変更を行っていました。
・2015(平成27)年6月1日…市長代理出席の項目追加
・2019(平成31)年4月1日…慶祝(会費)の規定変更、見舞・弔慰対象の追加
・2021(令和3)年5月1日…壮途金対象の追加、賛助金の新設

「正規版」伏せて「改ざん版」変更繰り返す

これら支出基準の変更に伴って、ホームページの掲載内容もその都度、見直されています。しかし、既に紹介した起案文書No.3の添付ページ案=「改ざん版」を下地に変更点のみ修正追加するだけで、「正規版」は一貫して伏せられてきました。

ポチの情報開示請求で初めて、見舞金・弔慰金の支出対象者・金額リストをはじめ、首長・議長への見舞金・弔慰金対象市町村リスト、「謝礼」規定などを含めた正規の支出基準が11月4日、明るみに出ました。取手市公式ホームページも今月11月11日、「正規版」に基づく内容に全面的に差し替えられました。

2003年8月から今月11月10日までの18年3カ月にわたって「正規版」ではなく「改ざん版」が取手市公式ホームページに掲載され続けてきたことになります。言い換えれば、取手市民は18年間にわたって、ホームページに掲載された「改ざん版」を「正規版」と思い込まされ、欺かれてきたのです。

市長交際費の支出内容とともに支出基準をホームページに掲載する目的はそもそも、基本的に領収書のない交際費が適正に支出されているか、主権者たる市民が点検できるようにするためです。改ざんされた支出基準では交際費支出を厳密に点検できません。支出基準の改ざんは市民の知る権利行使を妨害する反民主的な行為です。

県内2位の透明度評価、改ざんならランク外必至

取手市議会会議録検索・閲覧システムで調べると、藤井信吾市長は2009年6月1日に開かれた市議会平成21年第2回定例会の一般質問で、自らの交際費支出について次のようにかたっています。ちなみに、今年6月の定例会までの市議会で藤井市長が交際費に言及するのはこれ1回だけのようですので、長めに転載しましょう。

市長(藤井信吾君)

ただいまの染谷議員の御質問に答弁させていただきます。本議会の一般質問の皮切りを染谷議員、大変さわやかにスタートしていただきました。きょうは6月1日ということで、月も改まっておりますけれども、議場を見ますと、大変鮮やかな芝生のような若草色とか、また、桜のようなピンク色という形で、季節感も大変楽しめるクールビズになっていると思います。ありがとうございます。さわやかさといえば、やはり皆さんと一緒に、いいニュースですのでありがたいなと私は思っているんですけれども、市議会の議長さんの交際費の公開度、クリーン度が茨城県の中でナンバーワン、そして市長交際費のクリーン度が、ナンバーツーということでございます。

また、菅原政策推進部長も同月24日の市議会決算審査特別委員会での決算説明で誇らしげに付言しています。

なお、ことしの5月30日、市民オンブズマンいばらきから、交際費の情報公開制度の調査の結果が新聞に記載されております。それによりますと、32市のうち、取手市長が県内2番目の透明度というふうに評価を得ていることを申し上げさせていただきます。

茨城県生涯学習情報提供システムの団体・グループデータベースによると、「市民オンブズマンいばらき」は、ポチと同じく情報公開制度を活用しながら「行政にかかわる不正・不当な行為を住民の立場から監視し、その是正を図ることを目的に活動」する全県的な市民団体です。市民オンブズマンいばらきがどのように評価していたのか残念ながら調べようもありません。

ただ、支出基準を改ざんしてホームページに掲載していることが当時発覚していれば、明らかに県内最下位、いやランク外に確実に堕ちていたことでしょう。

2021年11月21日 02:23note公開

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